危険な彼女

もうあの頃みたいにはいかない。



自分も、奈津も、大人になろうとしている。



自分のピンチにヒーローがやってくるなんていう勧善懲悪な展開は起こらない。



あの頃とは違うから。




「………なっ…ちゃん………」




男たちに引きづられ、涙を流しながら、ぽつりとつぶやいた。



しかし、その先は言わない。



助けは来ないとわかっているから。




「ヒック…ヒック……」




亜紀は泣きながら、目を閉じた。



過去を振り返らない。



そう、自分に言い聞かせるように。





「………てめぇら、何やってんだぁ!!!」




その声に、亜紀は閉じていた目を開けた。