危険な彼女

〜桜side〜




桜は人混みの中に消えていく奈津の姿を呆然と眺めた。



その姿を止めることはできない。



その行為は自分のわがままだと理解していたからだ。





桜は唇をぎゅっと閉じ、ぷるぷると拳を震わせた。




「二人って…言ったのに………」




こう言ってはいけない。



奈津に初めて叩かれ、怒られて気づいたのに、つい言ってしまった。





しかし、言わずにはいられなかった。





慣れない浴衣まで着て、髪型もこの格好に合うものを思索し、待ち合わせの一時間も前に来たのだ。



これだけ楽しみにしてたのだから、一人でつぶやくぐらいいいんじゃないかと思えた。




「………あんなこと、言ったくせに………」




結局、行き着く言葉はそれだった。




桜は一人、うつむきながらとぼとぼと歩き始めた。