危険な彼女

「違うんだ、これは…

これは………!」




何とか誤解を解こうと言葉を探す。



しかし、とっさにうまい言葉なんて出るわけなく、ますます状況を悪化させてしまった。




「ご、ごめんね!

私…わた…し………


じゃ……邪魔…しちゃっ…た…」




そう言う亜紀は、笑顔なのに、ポロポロと涙を流していた。



決壊したダムのようにどんどん涙が溢れている。




「さ、さよう……なら…」




そう、絞り出すように言うと、亜紀は体を反転させて逃げるように走り出した。



奈津は慌てて亜紀を追いかけようとする。




…しかし、片手をぐっと桜に握られ、引き戻された。




「どこ行くのよ…」



「決まってんだろ!!?

亜紀、泣いてた…

何か勘違いしてんだよ、あいつ!!!


だから………!」



「ほっときなさいよ!!!」




はっ、と奈津は桜を見た。



握られた手に、ぐっと力が加えられるのを感じた。