危険な彼女

あれから10分…



相も変わらず彩芽はぶつぶつとひとりごとを続けていた。




さすがにつき合いきれなくなった奈津は、わざとらしくあくびをし、キッチンへ向かった。




「つーわけで晩飯はいらねぇから」



「いや…でもねぇ………

亜紀ちゃんかわいいし…

姫川さんもかわいいでしょ…


何?
意外と奈津ってかわいい系に好かれるのかしら?」



「………聞いてんのか?」




奈津は、冷蔵庫から牛乳を取り出しながら、嫌みにため息をついてみた。




「………聞いてるわよ………

で、晩御飯は?
今日はお父さんもおじいちゃんもいないのよ?」



「え?
二人ともいないのか?」



「お父さんは夜勤。
おじいちゃんは道場の関係でお食事会らしいわ」



「ああ、ね………」




補足しておくと、奈津の祖父である柳正道(ヤナギマサミチ)は、武術の道場を開いている。



もちろん、奈津や彩芽も小さいときから習っており、奈津もそれなりに武芸にたしなみがあるのだが………






姉の力がありすぎるせいか、奈津はあまりこのことを他人に話さないようにしていた。