危険な彼女

『ちょっと奈津、聞いてるの?』



「………え?」




亜紀のことに気がとられすぎていて、桜の声に気づかなかった。



桜の声は、怒りとも戸惑いともとれる声だった。




「あ…、わりぃ。

ちょっと考え事してた…」



『私が話してる途中に考え事?

ずいぶんといい度胸してるわね』



「………本当に悪い………」




奈津は頭をぽりぽりとかいた。



罰の悪そうな表情で、少しうつむく。




『………まあ、後でお仕置きするからいいわ』




「……………」




――私はよくないです桜さん。



奈津は見えない桜に懇願した。