危険な彼女

妙な沈黙が二人の間を包んでいた。




奈津は、何か話しかけなければ、と思うのだが、さっきの亜紀の言葉がひっかかり、言葉を発せずにいた。




亜紀は亜紀で、奈津が黙り込んでしまい、少し戸惑っているようだった。




「「……………」」




さらに沈黙が続く。



亜紀とこんなに気まずくなったのは初めてかもしれない。




奈津のこめかみを冷ややかな汗が伝うのを感じた。





「………ねぇ、なっちゃん………」




そのとき、ようやく亜紀が口を開いた。



何かを決心したかのように、奈津の背中に向かって話しかける。




「なっちゃんがヒーローなら…

私は………ヒロインかな?」




――!?




奈津は、いきなりの亜紀の言葉にビクッと体を震わせ、その勢いのまま振り返った。