「いらっしゃいませ、姫川様。

今日は何をお求めでしょうか?」




店に入るなり、店員がずらりと並んでのお迎えが待っていた。





動揺を隠せない奈津をよそに、桜にはそれが当たり前らしく見向きもせずに店内を歩く。





「ちょっ………待てよっ!!」




奈津はそのあとを急いで追いかけ、はぐれないようについていった。




「遅い、早く来なさい」





お前の歩くスピードが早いんだ!、と口には出せなかった。



振り返った桜の表情は氷のように冷たかった。



奈津のことなんてゴミとしか見ていないような眼差しである。




「ってかさ…

明らかに俺は場違いなんだけど」



「当たり前でしょ?

ここ、会員しか入れないような場所なのよ?」




会員制の店。


自分の住む世界とは違う世界を感じた今日この頃だった。