危険な彼女

「覚えてる?

このときのこと…」




写真を見ながら、少し寂しそうな口調で亜紀がたずねてきた。




「………まあ、一応。

ゴール直前で豪快にこけたんだよな」



「うん………

痛かったり恥ずかしかったりでいっぱい泣いたなぁ…」




そう言う亜紀の表情は、言葉とは裏腹に悲しそうにも、恥ずかしそうにも見えなかった。



奈津は、ただつったてるのも辛くなってきたので、ゆっくりと机のイスに腰を下ろした。




「でも………

このとき、なっちゃんが真っ先に駆けつけてくれて………

ゴールまで私をおぶってくれたんだよね…」



「そう、だったな…

今考えると、競技途中でいきなり入ってくるなんて馬鹿だよな、俺」




苦笑いを浮かべる奈津を見て、亜紀は首を横に振った。



その意味が分からず、奈津は首を傾げる。




「馬鹿じゃないよ…

なっちゃんは馬鹿じゃない………


ただ、優しいだけなんだよ」




そう言って亜紀はニコッと奈津に向かって笑った。