危険な彼女

奈津の母親は、奈津が中学に上がる前くらいに、病気で亡くなった。



………重い病気だった。




最初の頃は大丈夫だったのだが、病状が悪化するにつれ、身体中に変なチューブをつけられ、最後には立つことさえできなかった。



母が亡くなってからとゆうもの、忙しい父や祖父に代わり(祖母は他界)、奈津は身の回りの家事をしなくてはいけなくなり、それが現在の奈津のスキルの基となっている。




「………あれ?

そんなところでぼーっとしちゃって…どうしたの?」



「うわぁ!!!」




奈津は見事なまでに、後ろへ向かって倒れていった。



久しぶりに母との記憶をたどっていたせいで、目の前に亜紀が立っていたのに気づかず、思わず飛び退いてしまったのだ。




「なっちゃん!?

だ………大丈夫?」



「ま、まあ………一応、な」




奈津は照れくさそうに頭をかいた。



無様に倒れた恥ずかしさと、あまりにも近すぎる亜紀との距離に、気が動転しそうになっていた。