危険な彼女

「あの…その………」




いざ言おうとすると、なかなか言葉は出てこなかった。



そもそも言う必要はあるのだろうか?



亜紀が着ているのはスクール水着であって自前のものではない。



似合う似合わない以前に誉めることはおかしいのではないか。




「………えと……その………」



「わ、私!
忘れ物しちゃった!!

ちょっと取ってくるね!」




なかなか言葉を発しない俺を前に、耐えきれなくなったのか亜紀は突然そんなことを言い出した。



たたっと踵を返し、更衣室へ戻っていく。





「あーあ…

もう、何やってんのよこの馬鹿は………」



「いや〜、今のはあかんやろ?

マイナス百点ぐらいやな」



「いや、だってよ…

そもそも誉めるもなにもないんじゃないか?」



「そこを誉めなさいって言ってるの。


まったく…この鈍感馬鹿は…」




美冬は、やれやれ、と頭に手を当て、俺に冷めた眼差しを向けてきた。