そう考えると、何だか桜の照れているように見える仕草が何だか無性にかわいく思えてきた。



そんな桜を見ていると、思わず笑みがこぼれてしまう。




「………な、何笑ってんのよ?」




「いや、なんかさ…

ちょっと…おもしろかっ…ぶっ!!!?」




言葉を言い終わる前に、顔面に枕が飛んできた。



この正確無比のコントロール。



いっそ何か球技でもしたらどうかと思えてくる。




「よ、余計なこと言ってないで早く帰りなさいよっ!!!

あと十秒以内に出なかったらぶっ飛ばすわよ!!?」




そう言われ、俺はやれやれ、と肩を落とし、部屋のドアノブに手をかけた。





「……………」





しかし、何だか部屋を出ることが躊躇われてきた。






今日、奈津は知ってしまった。



桜の暗い過去。



友達のいない、独りぼっちだったとゆう過去。




それを知ってしまった今、何も言葉をかけずに出ていっていいものだろうか、と考えてしまったのだ。