危険な彼女

――な、何だ……?


まさか、この期に及んで命令しようってか?





それは避けたい。



ってか、やめてほしい。




「な、何だよ………?」




「その………
あれ…よ………」




「………は?」




「今日…は………

え、と………



………りがと…ぅ」




「え?何だって?」




あまりに小さな声。



もちろん、聞こえるわけなく、俺は耳に手をあてて桜にたずねた。




「………〜〜〜っ!!


あ、ありがとうって言ってんのよっ!!!

ちゃんと聞いてなさいよね!!!」




「………な、な…?」




奈津はこの世の終わりを感じた。



桜はきっと、明日には世界が終わるから、最後くらい自分にお礼を言っておこうとしているのだ、と勝手に解釈した。






………しかし、真っ赤に顔を染め、そっぽを向く仕草を見ていると、何となく照れているように見えていた。





――もしかして、本当に俺に感謝してる?





まさかとは思うが………



だが、だんだん桜の言葉が本音のように思えてきた。