危険な彼女

｢なっちゃん、大丈夫？｣




心配そうに奈津の顔を覗き込む、この少女の名前は浅倉亜紀。



肩までの綺麗な黒髪を持ち、高校生としてはまだ幼い顔立ちをしている。



その容姿は、中学生になりたての女の子、と言われても不思議ではなかった。



亜紀は、桜とはまた違うタイプの美少女で、かわいらしい、という評価が的を射ている。




｢大丈夫…多分………

それと…なっちゃん、ってどうにかなんないか…？｣




亜紀は、奈津のことを小さいときに呼び始めた愛称で、なっちゃん、と呼ぶ。



さすがに高校生にもなって、ちゃん付けは恥ずかしい。



奈津はさりげなく指摘してみた。




｢そ、そうだよね…

ごめんね奈津君………｣



亜紀の顔が一瞬にしてしゅんとなった。


奈津は慌てて取り繕う。


｢あ、いや…
亜紀がそう呼びたいならなっちゃんでも構わねえんだけど…｣



｢………ほ、本当に？

なっちゃん、でいいの？｣



｢え、あ…うん｣



｢えへへ…なっちゃん公認…｣




亜紀は頬を染めながら笑顔になった。



内気で自分の感情や意見を出せない亜紀にしてみれば珍しいことだった。




…ちなみに、この子はかなりの天然さんであったりする。