「優衣ちゃん!」

泣き腫らした目をしたおばさんが、私に手を振る。それに気づき、慣れないヒールのある靴を脱ぎ、畳みにあがった。

「おばさん、大丈夫?」
前に見たときより、なんだか小さくなった感じがした。もしかしたら、あまり食べてないのかもしれない。
ちょっと心配になり、おばさんを軽く抱きしめてみる。

(あ‥)
懐かしい香がして、目をとじる。誰かの匂いと同じ、優しくて甘い香がする。

(そっか、おばさんお菓子教室やってるから甘い匂いなのかな?)

と、甘い香に浸っていた優衣だが、誰かのおばさんを呼ぶ声にはっとして、体を起こした。

「行くね。優衣ちゃん、側に行ってあげて」
真っ赤に腫らした目で、優衣に優しく微笑んだ。