ことばにできない

「この人(と言って、大家さんは一緒に来た女の人を見た)の会社で、事務員が一人足りないんですって。それで、あなたのことを紹介したら、採用してもいいと言ってくれたの。

ただ、本採用にする前に、一ヶ月くらい見習いで入って欲しいそうなんだけど、あなた、また働く気、ある?」


その会社の名前を聞いて、驚いた。

この土地の顔役のような家だってこと、私でも知っている。

この辺では一番大きな運送店。
他に、古物商とかリサイクルショップとか、色々商売している。


「そんな立派なところに、私なんか…」

思わず口にした私の言葉を、女の人が遮った。


「悪いけど、あなたが勤めたコンビニさんと、ビデオ屋さんに、話を聞かせてもらったわ。
どちらのお店も、あなたには同情してた」

その人はニコリともしないで私を見ていた。

話し方がとっても事務的。

大家さんとは全然違う。