アルバイト先のコンビニから言われたのは、

「ヘアダイ禁止、メイクは薄く」

黒髪と素顔に戻るには、かなり勇気が必要だった。

でも、あれから何カ月も経ったのだし、
あの男がここまでやってくるはずはない…


こうして私は、コンビニ店員となった。

アパートから店まで、徒歩30分。
大家さんの言うとおり、この距離で楽になれる。
働いている間は、母からも、近所の人からも自由だ。



家族だけで切り盛りするコンビニ。
店長の家族はそろって、私に好意的だった。

店長夫人はよく、好奇心見え見えの質問をしてきた。

「お母様のこと、たいへんでしょ?」

私が「ええ、まあ…」と曖昧に答えると、それ以上深くは聞いてこなかった。


帰る時に、賞味期限ギリギリのお弁当やパンを渡される。

初めは抵抗があった。
でも、正直助かる…

朝はいつも、お昼代を置いて家を出た。
それは殆ど酒代となった。しかも母は文句を言う。

「これっぽっちじゃ足りない」

私はいつも、

「これが精一杯」と答えた。

母は渋々納得し、私たちはなんとか、まともに見える生活していた。







それが、壊れた。