母との生活は楽ではなかった。

でも私は、再び家を出る気にはなれなかった。

 
日が経つにつれて、最後の男に植え付けられた恐怖が増大したのだ。

もう、男を渡り歩く気力はない。


私は母のそばで、生活保護費を当てに暮らし始めた。


母はあるだけのお金をすべて、酒に変えようとする。
それを阻止することに、私は時間の殆どを費やした。

母とにらみ合うだけの日々は虚しい。

だけどそれが、私の人生…。


そんな日々の中、大家さんが訪ねてきた。


大家さんは、アルバイトの話を切り出した。

「あなたのお母さんの事情も、向こうには話してあるのよ。

ちょっと遠いけど、あなたには、かえってその方がいいとも思うし。

あなたも、いつまでもこんなんじゃ、ねえ」

大家さんは私のたった一人の理解者だった。
その人にこんな風に言われて、断れるはずがなかった。

大家さんの話は続く。
「それでね、特に資格はいらないんだけど、一応履歴書が欲しいんだって」


用意よろしく差し出された履歴書用紙を埋めようとして、初めて気づいた。


私は中学を卒業しているのだろうか…