そこに大家さんが訪ねてきた。

彼女は私に、コンビニ弁当を二つ差し出した。

「疲れたでしょ。これでも食べて…」

そう言かけて彼女は、私をじっと見つめた。

「あなた、具合悪いんじゃない?」


大家さんが勧めてくれた、小さなクリニックへ行った。

私は「風邪」と診断された。
「栄養状態が悪い」とも言われた。

家の近くまで戻ったら、自動販売機のそばで、母が見知らぬ男と並んで座っていた。


母は私を見つけて手を振った。
「お弁当食べきれないから、これと取り替えてもらったわ」
 
母は、得意げに缶チューハイを見せた。


近所の人が眉をひそめながら、遠回り気味に私たちの脇を過ぎていく。


母と並んで座っていた男は、迷惑そうに私を見た。

「アンタのお母さんかい? 
言っちゃ悪いけど、ちょっとおかしいんじゃないの?」

そう言って、人差し指で頭をチョンチョンとつついてみせる、
その人の膝には、手つかずのお弁当が乗っている。

「すみません。これでもう一本、チューハイ買ってください」

私が男にお金を渡すのをみて、母は狂ったように叫んだ。

「アンタ、金持ってるじゃない。
だったら私にも買ってよ!」

私は母の手を引っ張って、家に戻った。