その夜、彼から指示された服を着て、玄関で正座して彼を迎えた。
ギャザーたっぷりのスカートの内側に、ハンドバッグを隠していた。
「お帰りなさいませ」
頭を下げながら、ドアが大きく開くのを待った。
低い姿勢のまま彼の足をすくうように突進した。
彼が転んだ。
私はそのまま走り出た。
ハンドバッグを胸に抱えていた。
裸足だった。
それを気にする余裕はなかった。
非常階段を駆け下りるとき、彼の泣き叫ぶような呼び声が聞こえた。
……
……
私は走り続けた。
彼に追いつかれる気がして、振り返るのが怖かった。
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