絞り出すような彼女の声。

その声で我に返って、私は彼女を見た。

彼女は両手で顔を覆い、しゃくり上げている。
一度は抑えた嗚咽が、またこみ上げてきたのだろう。


(ごめん…ゴメンね)

彼女に寄り添いたいと思って、ここに誘ったのに、気づけば私はただ、彼女の横に座っているだけだった。
彼女の話を真剣に聞きもせず、ただ彼女の横で、彼女の声を聞きながら、ずっと自分の過去を追いかけていたのだった。


(ゴメンね、あなたのそばにいながら、
 私、自分のことばかり考えてた)

今の彼女は、とても繊細で敏感なはず。
きっと、私が上の空だったことを、とっくに見抜いている。


(ゴメンね、ゴメンね…)

言葉を出そうとしても、声がつかえてしまう。
私は心の中で何度も謝りながら、彼女にティッシュペーパーを差し出した。

彼女はしばらく、じっとそのティッシュを見つめていた。
それから俯いたまま、言った。

「ありがとう。

 お姉さん、優しいね。

 幸せだから、優しくなれるんだよね。

 私も、幸せがほしいよ」

そう言ったとたん、また、顔を歪めた。

私は無理矢理、彼女の手にティッシュを握らせた。
今の私には、そんなことしかできない。