「母のことは諦めてます。
この先、これ以上他人に迷惑を掛けないで済むのだけが、救いです。

あんな母よりも、私は、大家さんが本当のお母さんだったらどんなにいいかと…」

「だめよ。あなたのお母さんは、あなたを産んでくれた、佳子ちゃんだけ」

大家さんは私を遮っていった。

「産んでくれてありがとうって、いつかきっと、感謝する日が来るから」


大家さんに手を握られて、私は涙が止まらなかった。

母と私を見捨てなかった唯一の人。

この人のおかげで、私の今があるのだった。



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