俺は、時計を確認した。あれ、よく見ると映画から2時間過ぎている。
まさか、あそこから寝てしまったのか、いや考えすぎていてあっというまに時間が過ぎたんだ。なんていうことだ、もしこの場に神がいたらこういうだろう。ジーザスと。
「あれ、見てなかったの?」
春は無敵の顔を見た。
「いや見てたよ。すごかったね。また見に来たいね」
「そう、よかった」
春はうれしそうな顔をしていた。俺は自分が情けなかった。まさか、回りが見えていなかったことに。そんなことを後悔しても仕方がない。まだ、チャンスがある。夜が勝負だ。俺はおもいきって春さんを誘った。
「春さん、この後、よろしかったら食事でもどうですか」
「うん、いいね。どこに行こっか」
「えっ、まじ」
「うん。いいよ」
やりました。お母さん、お父さん、おじいさん、おばあさん。女性を誘うと言うことに成功しました。俺は感動していた。言ってよかった。いつも言えなかったからよけいに感動していた。おっと、感動してる場合じゃないぞ。食事に行くんだ。
「で、ではいきましょう」
「うん」

夏の夕暮れが美しかった。彼女の心みたいに、清らかだった。