「摩耶さん、コロナ・ビール!」
久しぶりに訪れた「マーヤ」のカウンターに座るなり、私はタバコに火をつけた。
「え?香菜ちゃん、吸うの?」
驚きながらビールを出してくれた摩耶さんに、煙を吐きながら答えた。
「3年ぶり。
せっかく禁煙してたのに、今日という今日はもう我慢ならなくって」
私は摩耶さんが出してくれた灰皿に吸いさしのタバコを置き、ビールを飲んだ。
「はぁー、おいしい!」
ビール瓶を、トン、とカウンターに置いたとき、店の扉が開き成哉が入ってきた。
鉢合わせするかも、と覚悟はしていたけれど、ひと月半も会っていないと、やはり緊張する。
それに――
私はすばやく成哉の後ろに目を走らせた。
今日は一人みたいだ。
よかった……


