「じゃ、香菜さん、お先に」


「うん、ありがとね。
お疲れ様~」


最後まで残って手伝ってくれていた千佳ちゃんを見送り、私はまた書類作成に没頭した。


翌日の部課長会議で使う資料なので、資料集めは千佳ちゃんに手伝ってもらえても、文章は自分で考えねばならない。


昼間は課員に指示を出したり報告を受けたりでなかなかじっくり考える時間が取れないため、こういう仕事はどうしても残業になってしまう。


誰もいなくなったフロアでパソコンに向かっていると、静けさを破ってケータイが鳴り響いた。


液晶で相手を確認し、通話ボタンを押す。


「はい」


『まだ仕事中?』


「うん、でも誰もいないから大丈夫、なに?」


『俺、今終わったとこなんだけど、何時ごろ帰れるかと思って』


私はパソコン画面の右下に出ている時計を見た。


「んー、9時過ぎには終わると思うから、10時には帰れるかな。
駅に着いたら電話する」


『了解、じゃまたあとで』