「いや、ホントにさ。
香菜さんといると、時間が戻ったような気がするんだ」


「時間が?」


私は首をかしげた。


「ほら、俺、香菜さんを最初に好きになったの23歳の頃だから。
その頃に戻っちゃうんだよ。
あの頃できなかったことを取り返してる感じ?」


「ふうん」


「香菜さん、あの頃と変わんないし」


「えー、そう?
ずいぶん年取ったよ」


私は苦笑いをもらした。


「いや、俺の中では変わってない。
でも、たぶん、これからは変わるんだろうなあと思う」


「そうなの?」


「うん。
これからは一緒に年取って行けるんだと思う」