大人の女と男の関係

「やっと会えた」


聞き覚えのある声に顔を上げると、成哉が微笑んでいた。


たまたますれ違いが続いたのか、しばらく顔を合わせておらず、3週間ぶりくらいだった。


「あら、こんばんは」


そつなく笑顔で挨拶してすれ違おうとしたが、腕をとられた。


「待って」


同じ段に並んで立ち止まった。


「もう帰るとこなんだけど?」


笑顔のままそう言うと、成哉は向きを変えて私と一緒に階段を上り始めた。


「じゃあ、2軒目付き合って。
おごるからさ」


別に用はなかったけど、成哉におごられる謂れはない。


「もうおなかいっぱいだし、今日は帰るわ」


しかし、成哉は諦めなかった。


押し問答の末、割り勘なら、と付き合うことにした。