「え?
だって、千佳ちゃんには……」


私が恋人の存在を言おうとすると、千佳ちゃんは顔の横で人差し指を左右に振った。


「香菜さんが成哉さんを好きか嫌いかって話ですよ。
成哉さんが私でも誰でも、誰か他の女と付き合うって聞いたらいやな気持ちしません?」


「それは……」


千佳ちゃんの誘導尋問だとわかっていたけれど、私は話を聞いてくれたお礼に素直に答えることにした。


「いやかも」


「でしょ?
ってことは、香菜さんは成哉さんを好きだってことでしょ?」


私が成哉を好き……


改めて自問して、私は8月に成哉に会ったときのことを思い出していた。


「うーん、恋愛の好きっていう気持ちより、親友、みたいな感覚の方が強いかも」


「親友?」


私の返事を聞いて、千佳ちゃんはいぶかしげに眉を寄せた。