「本当にね。
大変だった……
もちろん、私にも至らないところはあったと思うの。
自分を責めて、悩んで落ち込んだときもあった。
でもそんなプライベートなこと、誰にも相談できないし。
ただ、向こうの家に行った後からは、ずっと母が支えてくれてたの。
今時、バツイチなんてざらにいるんだからいつでも帰っておいでって。
父は何も言わなかったけど、心配してくれてるのはわかってた。
家族がいたから、乗り越えられたんだと思うわ」


両親の顔を思い出しながら、私はそう締めくくった。


ふぅ~と最後に一つため息をついて、千佳ちゃんは身を乗り出した。


「香菜さん、やっぱり、香菜さんは幸せにならなきゃだめです!」


千佳ちゃんはきっぱりとそう言ってワイングラスを掲げた。


「香菜さんの幸せを祈って」


千佳ちゃん……


私は微笑んでグラスを合わせた。


「ありがと」


チン、という音とともに、何か一つ、体からおもしが取れたように感じた。