10月に入ったある日の昼休み。


「香菜さん、12日はどうするんです?」


千佳ちゃんに聞かれた。


10月12日。


それは、私の誕生日。


31歳の誕生日。


もう嬉しくもなんともない。


どちらかといえば、なければいいのにとさえ思ってしまう。


また一つ年を取る日。


「別に。
平日だし、普通に出社して普通に帰宅して終わりよ」


「えー、そんなの寂しすぎますよ~
ほら、このイタリアン良さそうですよ、お祝いにおごっちゃいますから行きましょうよ!」


千佳ちゃんは雑誌の特集記事を指差した。


「……ありがと」


私は千佳ちゃんの気遣いに素直に甘えることにした。