部屋に入るとすぐに私はコーヒーを淹れた。


冷蔵庫にはアルコールも入っていたけれど、酔った勢いで、なんていうのは避けたかった。


テーブルに2つのカップを置くと、私はさっそく成哉を促した。


「で?どういうこと?」


成哉は素直に語りだした。


「おととし、俺は念願かなって出版社で正社員として働き始めたんだけど、由宇も同じ時期に大学を卒業して働き始めたんだ。
俺は順調だったんだけど、彼女は人間関係に躓いて、早く会社を辞めて結婚したがった。
それで去年、結婚することになって、由宇は仕事を辞めた」


なるほどね。


結婚のきっかけとして、似たような話はよそでも聞いたことがあった。


「俺自身は本当は結婚はもう少し先でもいいと思ってたし、経済的にもあまり余裕はなかったから、子どもは当分先にするつもりだった。
ところが、由宇の田舎のお母さんやお祖母さんがことあるごとに孫を催促してきて。
跡取りの男の子を早く産まないと嫁として失格とかなんとか、由宇にプレッシャーをかけたんだ」


「はあ?」


私は思わず頓狂な声を上げてしまった。