ひとしきり成哉の勤めている出版社の雑誌の話で盛り上がると、千佳ちゃんはそろそろ帰ると言い出した。


時計を見ると、9時半。


「マーヤ」から千佳ちゃんの家までは電車で1時間半ほどかかる。


翌日も仕事がある私達はあまり遅くまでいるわけにもいかなかった。


しかし、私の新居までは30分ほど。


「うちに泊まれば?」


私は千佳ちゃんに提案した。


「んー、でも明日も同じ格好で会社に行くのはちょっと……
私は失礼しますけど、せっかくですから香菜さんはもう少しいて下さい。
そうだ、成哉さん、帰り、香菜さんのこと送ってあげて下さい」


唐突に千佳ちゃんに頼まれ、成哉はとっさに「ああ」と頷いた。


え、そんなのいいのに。


しかし、私に口を挟む猶予を与えず、千佳ちゃんはさっさと摩耶さんに挨拶して帰ってしまった。