大人の女と男の関係

名刺を見ながら、そんな過去を思い出していると、成哉がいぶかしげに顔を覗き込んできた。


「名刺、そんなに珍しい?」


声をかけられ、我に返った。


「えっ、あ、いや、ううん。
あの、ごめん、私、ふだん名刺交換することなんてなくて、持ち歩いてないんだ」


笑ってそう言い、ごまかした。


名刺を持っていなかったのは事実だけど。


「いいよ。
香菜さんの名刺は前にもらったことあるし。
仕事は変わってないんでしょ?」


「うん」


微笑んで頷き、私は成哉の名刺をバッグにしまった。