久しぶりの「マーヤ」。
少し緊張しながら扉に手をかけた。
しかし一歩中に入ると、以前と変わらぬ雰囲気が迎えてくれてほっとする。
摩耶さんを探してカウンターの向こうを見ると、ちょうど奥から出てきたところだった。
「あ、いらっしゃい」
相変わらずの美しい笑顔を見つけて、こちらまで自然に笑みが浮かんだ。
「こんばんは」
「あら、お友達?」
摩耶さんはすぐに千佳ちゃんに気付いた。
千佳ちゃんはぺこりと頭を下げた。
「会社の後輩の佐伯千佳(サエキチカ)さん。
同じ部署で働いてるの。
ここの話をしたら一緒に来たいって言われて連れてきちゃった」
言いながら、懐かしいカウンターの指定席に着くと、千佳ちゃんも隣に腰掛けた。
「大歓迎よ。
といっても、もうあと何回お目にかかれるかって感じなんだけど」
摩耶さんはそう言って千佳ちゃんに名刺を差し出した。
「摩耶です、どうぞよろしく」


