初めてあの子を見たのが、高校一年の秋であった。



派手すぎず、地味すぎない。

普通と言うには、どこか言葉が足りない。




うっすら茶色いのサラサラとした、ミディアムボブの髪。


ほんのり赤みがかった白い肌に桜色の唇。


そして彼女は、独特のふわりとした雰囲気とクリクリとした大きく優しい瞳が印象的であった。




当時、クラスも委員会も何もかも違い、彼女との接点はまったくなかった。


ただ、一度廊下ですれ違ったあの瞬間から、自分の世界に彼女が入ってきたんだ。





あの後、臆病者の俺は自分から彼女との距離を縮めようとすることも、彼女のことを知ろうとすることもしなかった。


ただ、たまに廊下ですれ違うひとときだけで、十分に満たされていた。