俺は見ない

「昴さん、僕に挨拶しないでください。桂子姉が大切なら、この家の家族がしていることに従ってください。」
姿勢を正して、真っすぐ目を見た健司君は大人びた表情で、そう言った。
その姿を見て、俺は自分が言ったことが、なんて的外れだったかを気づいた。健司君は反抗期じゃない。誰よりも大人だ。

「俺は、」
君の味方になる。そう続けようとした俺を遮り、彼は続けた。

「橘家の一員になりたいなら、桂子さんを好きなら、僕に挨拶しないでください。」

そう言って、階下へと行った。