いつも一枚上手な希さんも、奏次の話には滅法弱い。 「ほんと、そんなんじゃないんだけどさ…奏次、元気?」 「…最近来てないんですか?」 「うん…」 「このところ忙しいみたいだけど、元気ですよ」 「そっか、ならいいの。…ごめんね?」 「いえいえ」 そんな希さんが可愛くもあり、 「じゃあ私行きますね」 「うん、連絡するから」 切なくもある。 見送る希さんの気配を背中に感じながら複雑な感情を抱いたまま、逃げるようにして美容院を出た。 .