家の門を出たら
空の青が濃くなりかけ
夜の始まりだった
三日月の近くに金星が輝く
ハザードをつけて歩道に寄せて駐車してある青い車に近づくと
先生が運転席から腕を伸ばし
助手席のドアを開けた
「こ、こんばんは」
なぜか すごく緊張して
助手席に座り
ペコリと頭を下げる
先生はクスクス笑いながら
「はい。こんばんは」
軽く頭を下げた
シートベルトをしながら
チラッと視線だけ
運転席へ向ける
先生の顔を見るのは
夏休み入ってから初めてだ
先生は前を向いたまま
別にどこを見てた
わけじゃないけど
一瞬、「あ」って顔をした。
「先生、どうかした?」
カチリとシートベルトを止め
そう訊くと
少し慌てたように
「何でもないよ」と
首を横に振った
「でも、今
何か思ったでしょう?」
気になって
しつこく食い下がる
「なーんでもないって
発進させるよ?」
ハンドルに手をかけ、
ハザードを消し
右にウインカーを出す
車はまだ少し明るい夜の住宅街をゆっくり走り出した



