朝、玄関で
駅に向かうお母さんを見送り
リビングに戻ると
やけに静か過ぎる気がして
落ち着かない
私は もうすっかり
家族と過ごす毎日が
当たり前になって
一人暮らしの感覚を
失っていることに気付く
ぼんやりと部屋を
見渡す私の足元に
「はっ、はっ、はっ」
舌を出した藤くんが
構って構ってとねだる
そうだ。私は1人じゃない
「藤く~ん。
3日間ラヴラヴしよーね」
ぺたりと床に座って
ふわふわの身体に抱きつくと
頬をペロペロ舐める舌が
なま温かかった。
夕方、
ドラマの再放送を見ながら
藤くんと ゴロゴロ
ソファーで寝転がる
………もう そろそろ
藤くんとお散歩しよう。
ドラマから
夕方のニュースに
替わった時
藤くんと散歩に出掛けた
日は西に傾いてはいるけど
まだまだ明るい
太陽に会える時間が長いのは
やっぱり嬉しい
町内をぐるーっと一周して
藤くんを拾った公園を通る
この公園、藤くんにとっては
哀しい場所だろうか?
散歩のたびに思う
当の藤くんはなに食わぬ顔で
トコトコ進む
捨てられた場所ではなく
私と出逢えた場所だと
思い出に残って欲しいな
公園から聴こえる
ヒグラシの声を背中に
藤くんと家に向かって
ただ歩いた、いつも通りに。



