「キレイだねぇ」 誰に話しかけるわけでもなく、ボソリと呟いてみた。 呟きは空に溶け、桜の木に吸い込まれた。 ――春。 この季節がはじまりなら、終わりはいつだ。 冬か、秋か、夏ではない気がする。 いや、はじまりも終わりも同じところからなのかもしれない。 あまりに近いので、気づかないだけなのだ。 近いもの程気づかないというが、そんな行為はとても人間らしくて中々笑えるではないか。