『そ,そうです!!越智です弘樹!!俺,今皐樹さんと話をしたあとで迷っていただけなんです』
『…まぁ,そうでしたか。うちの望月が申し訳ありませんでした』
おばさんが女の子の頭を無理矢理下げる。
『あの,お二人は…』
『私はここでお手伝いさんをやってる斎藤と申します』
『同じくアルバイトの望月香苗ですっ,あの…すみませんでした!!!』
もじもじしながら謝る香苗ちゃんの姿に,俺はとてもじゃないが怒れなかった。
『いいよ,そのかわり俺のことリビングまで連れてってくれない?汗』
『そうよ,望月さん連れて行ってって差し上げなさいよ。お詫びとして』
斎藤さんが俺に乗っかる。
『わかりました,じゃあ…ご案内します』
こうして俺は,香苗ちゃんに案内してもらうことになった。
『ほんとにすみません,あたし,越智さんが衣緒李さんの彼氏だなんて知らなくて…』
『いいのいいの,気にしないで』
『ありがとうございます』
香苗ちゃんは小さく笑った。
『香苗ちゃんて若いよね?高校生?』
『はい,高2です』
高2にしてこんなとこでバイトって!!
なんか凄い。
『はは,いいね若いって』
『そんな,越智さんも十分若いじゃないですか』
『まぁね…でもやっぱ,高校生には負けるよ』
『そんなことないですよ,十分生き生きしてますっ』
『嬉しいこと言ってくれるね。でも,確かに今は生き生きしてるかも。香苗ちゃんは彼氏とかいる?』
『えっいやっ…いないです』
『ほんとにー??可愛いのにもったいない』
『そんな,あたし可愛くなんかないですよ―。あ,着きました』
たわいのない話をしているうちに,俺達はリビングに着いた。
そのとき,俺の目に入ってきたのは,
今1番見たくない光景だった。


