『遅いよ。1時間も遅刻っ』
越智さんは膨れていた。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい〜っ泣』
『ははっ,冗談だって。ほら,いこ』
あたしは越智さんとならんで歩く。
もちろん,帽子を深く被って。
着いた先は,小さな小さな居酒屋さんだった。
お客さんは他にいなかった。
越智さんが戸を開ける。
ガララララッ
『ういーす』
『おぅ,来たか。らっしゃい』
…え?知り合い?
『いやぁ遅かったな。お前が7時過ぎに来るって言うから客入れなかったのに』
『ごめんごめん。連れが寝坊してさ。な,衣緒李ちゃん?』
越智さんがニヤニヤしてあたしを見る。
『ホントごめんなさい…』
『弘樹,この子ってもしかして』
『うん,IOだよ。衣緒李ちゃん,こいつは俺の同級生の聡志』
『はじめまして,聡志さん』
『あっはじめまして…うっわ本物?後でサインお願いします!!』
『…は,はい』
綺麗な顔…
『あんま芸能人扱いすんなよ,衣緒李ちゃん引いてる』
越智さんてば何てことを!!
全く引いてないのにっっ泣
『あそっか,ごめんね』
『いえ…』
見とれてただけです,とは
冗談でも言えなかった。
『じゃぁ今日はじゃんじゃん飲んでってよ。まけるからさっ』
『やった!!ありがとうございますっ』
あたしは普通にお礼。
『きゃ―聡志すてき―』
越智さんは,きもい。笑


