『なにがあった?』


そう聞く大二郎に,あたしは記事を見せて話した。



『なんだよソレ…結局衣緒李は悪くねぇじゃん』


『ううんでもね…勇人を傷つけたってことは事実だから』


大二郎は悲しそうな顔をする。


『…やめてよ,そんな顔しないで』


『でも…』


『大丈夫,あたしは大丈夫だから。ありがとう,大二郎』


『無理すんなよ?なんなら泊まってくか?笑』


『何されるかわかんないからやめとく!!』


大二郎は,優しい人だ。


そのあとも,いろんな思い出話や野球の話をした。


ノリで,恋ばなも。


『大ちゃんは最近どうなの?千百合さんと』


千百合さんは大二郎の彼女だ。


写真でしか見たことないけど相当な美人さん。


『あれ,言ってなかったっけ?俺達別れたって』


『聞いてないわーい!!』


『うん,フラれたの。1ヶ月くらい前かな?
まぁ,もうふっ切ったけどね!!』


『そっか…すごいなぁ。あたしはまだまだ引きずりそう。ってかあたしたち…仲間?笑』


『はは,そうかもな』


…気,使ってくれたのかな。


ふっ切った,なんて。


ホントにふっ切れてるなら,そんな顔になるわけないよ。


大二郎…ごめんね。


『…じゃぁ,そろそろ帰るね。リストバンド,よろしく』


『おぅ。またいつでもこいよ,待ってるから』


『うん、ありがと。またね』



寮に来てみて,よかったな。


大二郎に話しただけで,ちょっと楽になった。


勇人とは,残念な感じになってしまったけど…



きっとあたしはこの先もずっと,ドルフィンズファン。


あ,ドルフィンズって
勇人たちのチーム名ね。


みんないい人だし。


野球も強いし。


これからも,ちょっとだけでいいからドルフィンズに関わっていけたらいいな。


そんなことを考えていた帰り道で,不意にあたしのケータイが鳴った。