『詳しいことは,俺もあんまり知らないんだけどさ。なんか,彼女を友達に取られたり,親友に裏切られたりで一時期本当に悩んでたらしいから…』


そう…だったんだ…


『今は落ち着いてるみたいだけど,今のあいつには野球と衣緒李ちゃんだけだから…大事にしてやってほしい。大袈裟かもしれないけど,衣緒李ちゃんがいなくなったらあいつ,もう野球すら出来なくなんじゃないかって,俺,怖くて…』


遠山さん,気付いてないなぁ。


勇人には,チームメイトっていう最高の仲間がいる。


遠山さんも,例外じゃない。


現に,こんなに勇人のこと考えてくれてる。


その絆は,あたしにきることはできない。


だから,仮にあたしがいなくなっても勇人の野球人生はなにも変わらないのにね。


悔しいから,黙っとこう。


『大丈夫ですよ,昨日も勇人と約束しましたから。あたしはどこにもいかないって』


『衣緒李ちゃん…』


『もう,決めたんです。何があっても傍にいて,勇人を守るって』


お互いに微笑む。


『よかった…』


それからは,少し他愛のない話しをしてから遠山さんは帰っていった。


勇人はすごいなぁ。


こんなにも,チームメイトに愛されて。


ちょっと羨ましかったりして。



『さて,と』


あたしも仕事に向かった。


今日は,もうすぐ発売になる3rdアルバムの収録。


気合いいれなきゃ。


ラヴソングは…



君のために歌うよ,勇人。