どのくらい走ったのだろうか。

やがて車は止まる。

…聞こえてくるのは雨音だけ。

緊張に鼓動が早くなる。

…ややあって、車のドアが開いた。

吹き込んでくるひんやりとした空気。

そして、スカートから伸びた素足に飛び散ってくる雨水。

相当な雨のようだ。

それ以外の音は殆ど掻き消されてしまう。

だけど、その雨の音に紛れて辛うじて。

「降りるんだ。足元に気をつけて」

少しかすれたような、男の声が聞こえた。