いつでも逃げられる

振動と共に、車は走り続ける。

道路の継ぎ目の振動?

いや違う。

この不規則な、荒々しい振動は、恐らく路面の悪さによるもの。

砂利道、或いは山道ではないだろうか。

…運転する男は、終始無言のままだった。

女子高生を誘拐するという行為に緊張、或いは興奮しているのか。

荒い息遣いは整う事がない。

…その呼吸と車の振動に紛れて、車体を叩く音が聞こえてきた。

雨音。

私が学校を出る時には天気もよかったというのに、夕立だろうか。

雨が降れば、みんな建物の中に入ってしまう。

私が誘拐されているのを目撃する人はますますいなくなる。

絶望的だった。