いつでも逃げられる

ドアを閉じる音が二回。

一回目は私を乗せた後部座席を閉める音。

二回目は恐らく、男が運転席に乗った時の音。

…血の気が引くのを感じる。

やばい…!

懸命に足を動かす。

すぐに足が何かに当たった。

車のドア。

私は滅茶苦茶に足を動かし、ドアをひたすらに蹴った。

外に音が響けば、誰かが気づくかもしれない。

誰かが助けてくれるかもしれない!

「~~~っ!~~~~ッッッッ!」

塞がれた口で唸り、声を上げ、ドアを滅茶苦茶に蹴る。

荒くなる呼吸。

汗ばむ体。

だけど誰も気づく様子はない。

…駄目だ、助からない。

そう悟ったのは、車が動き始めてしばらくしてからだった…。