いつでも逃げられる

くぐもった声を上げる。

呼吸まで封じられる為に、自然と鼻息が荒くなった。

どうにかして逃げないと。

後ろ手にされた両手を動かし、地面に踏ん張って、私は何とか抵抗を試みる。

男はそんな私の両肩をがっしりと掴んで、引き摺るように移動した。

ガチャッ。

何かの開く音。

同時に、私は小包を投げ込むように横倒しにされる。

乱暴に扱われた割には、転倒した時の痛みはなかった。

全身を受け止めるような柔らかな感触。

先程の音も加えて想像するに、車の後部座席に載せられた…否、押し倒されたようだった。