いつでも逃げられる

男は抵抗する私に手間取りながら、両手を拘束する。

カチャリという金属音。

独特の重み、冷たい感触。

…手錠?

視覚に頼らなくても敏感に感じ取れる人間の感覚に驚くと同時に、私はもしかしたら誘拐されるのかしら…などと冷静に判断できる自分に驚いた。

まだ校門を潜って何メートルも歩いていないというのに、こいつ、私を待ち構えていた?

そんな考えを巡らせる間もなく、私の視界は暗闇に支配される。

目隠し。

声を、動きを、視界を制限され、いよいよ私は拉致確実となった。