いつでも逃げられる

気配を窺い、男が私から離れている隙を狙って、私はソファから立ち上がる!

「っあ!?」

男の驚いたような声。

それに構わず、私は目隠し、後ろ手のまま走り出し。

「っ!!」

いとも簡単に転倒した。

足元に何か落ちていたのだ。

それを踏みつけ、転倒してしまったらしい。

「加奈子ちゃん!」

私を起こそうとしたのか、それとも捕まえようとしたのか。

男は倒れた私の体にしがみつく。

ドサクサに紛れて胸を触られ、私はパニックになった。

男の手の中で滅茶苦茶に暴れ、何度も男の体を蹴る。

しかし。

「加奈子っっ!」

突然の怒声。

私はビクリと体を震わせて静止する。

…静寂の訪れた部屋に、雨が屋根を叩く音だけが響いた。