「・・・勝てばいいだけなのに。」
真木ヒナタが、再び執事に聞こえるか聞こえないかの声でつぶやく。
「・・・何ですか、ヒナタさん?」
「え、聞こえちゃった?独り言だったんだけど・・・いや~、勝てばいいだけなのに、もの凄い弱気だなっと。・・・やっぱり、歳取ると人間弱気になっちゃうんだよね。・・・気にするなよ・・・・龍一。」
真木ヒナタは、少し馬鹿にしたような言い方で執事に話しかけた。
「・・・誰が、弱気になったですって?」
「・・・龍一。」
真木ヒナタの表情は、明らかに執事を馬鹿にしていた。
「・・・いいでしょう。そこまで言われたら、私も引いてはいられません。」
「えっ・・・龍一さん?」
私は、不安そうな表情で執事を見る。
「大丈夫ですよ、小夜さん。私は、負けません。」
優しく響く声で私に言い聞かせる執事。
ただ、その声を聞いても一抹の不安をぬぐえない私。


